井村氏の保有銘柄を調べていると、不思議なことに気づく。
バフェットコードできもと(7908)の2025年3月末時点の保有割合が5.34%と表示されているのに、EDINETの大量保有報告書には井村氏の名前が一切出てこない。


5%を超えているのに報告書がない。なぜか。
2つの開示書類、2つの分母
答えは「分母が違う」からだ。
日本の株式開示には大きく2種類ある。
ひとつは大量保有報告書。株主が5%を超えたときにEDINETに提出する書類で、金融庁「大量保有報告制度の概要について」に明記されている通り、保有割合の計算式はこうだ。
保有割合 = 保有株数 ÷ 発行済株式総数(自己株式を含む)
もうひとつは有価証券報告書の大株主欄。会社が年1回提出する書類で、上位10位以内の株主が記載される。2018年の金融庁による内閣府令改正により、こちらの計算式はこうだ。
持株比率 = 保有株数 ÷ 発行済株式総数(自己株式を除く)
分母から自己株式を「含む」か「除く」か——この違いが、同じ保有株数でも異なる数字を生む。
きもとの場合
井村氏はきもとの株式を2,409,000株保有している。
きもとの株式数は以下の通りだ。
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株式数発行済株式総数(自己株式含む) … 54,772,564株
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自己株式数 … 約9,672,564株
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発行済株式数(自己株式除く) … 約45,100,000株
この2つの分母で計算すると:
`大量保有報告書の計算: 2,409,000 ÷ 54,772,564 = 4.40%(5%未満 → 報告義務なし)
有価証券報告書の計算: 2,409,000 ÷ 45,100,000 = 5.34%(上位10位以内 → 大株主欄に記載)`
同じ保有株数なのに、一方は4.40%、もう一方は5.34%。きもとが約967万株の自己株式を抱えているため、計算式の違いが約1%の差を生み出している。
大量保有報告書上では5%に届かないため、井村氏はEDINETへの提出義務がない。しかしきもとの有価証券報告書には大株主として名前が載っている。
逆のケースも存在する
以前の記事で書いた日本ハム×ブラックロックのケースは、この逆だった。
日本ハムが4月30日に485万株を消却したことで発行済株式総数が減少し、ブラックロックの保有割合が4.79%から5.04%へと跳ね上がった。消却によって分母が縮んだケースだ。
今回のきもとのケースは、自己株式が大きいことで大量保有報告書の分母(自己株式含む)が膨らみ、5%の壁を下回っている。
分母が縮めば5%を超え、分母が膨らめば5%を下回る。大量保有報告書の「5%ライン」は固定された壁ではなく、発行体側の株式構成によって動く。
大量保有報告書だけでは見えない
EDINETの大量保有報告書は強力な情報源だ。しかし今回のきもとのケースが示すように、5%未満の保有はそもそも対象外で、著名投資家の動きをすべて捕捉できるわけではない。
有価証券報告書の大株主欄と組み合わせて初めて、より完全な絵が見えてくる。
ただし有価証券報告書は年1回の更新だ。リアルタイム性という点では大量保有報告書に軍配が上がる。
どちらも一長一短がある。両方を読む習慣が、投資家の動きを追ううえで力になる。
大量保有報告書をなるべく早く受け取りたい方は、ぜひMartifyをお試しください。 ※投資判断はご自身の責任で。