月曜の夜、まとめのメールは26件だった。八月に入ったばかりで、静かな週になりそうだと思った。ついこのあいだ、八月はいちばん静かな月だという記事を書いたところでもある。
金曜の夜、同じメールが125件になっていた。
一週間ぶんを並べるとこうなる。
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月 合計:26件 新規:1件 変更:25件
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火 合計:29件 新規:2件 変更:27件
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水 合計:65件 新規:15件 変更:50件
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木 合計:110件 新規:22件 変更:88件
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金 合計:125件 新規:16件 変更:109件
五日で355件。月曜の五倍近いところまで来た。数字だけ見れば、週の後半にかけて相場が動いた、と読みたくなる。
増えた分の中身を開く
木曜の110件を、提出者名で並べ直してみた。野村證券の名前が二十件を超えている。三井住友トラスト・アセットマネジメントが十五件前後。金曜の125件も同じで、野村證券が二十件超、みずほ銀行が十件前後。
保有目的のラベルを見ると、そのほとんどが「在庫・運用」か「政策・取引」だった。証券会社や信託銀行、運用会社が、5%のあたりを出たり入ったりしている行である。木曜と金曜だけで、同じ会社の名前が縦にずらりと積まれていた。
つまり、110件も125件も、110の別々のできごと、125の別々のできごとではない。数えているのは報告書の通数であって、できごとの数ではなかった。
一日ずつ受け取っていると、この重なりは見えにくい。届くのは一件ずつだからだ。件数の欄には合計しか出ないし、その合計は「今日は大きな日だった」の顔をして届く。
星は、五つまでしか出ない
もうひとつ、並べてみて気づいたことがある。
⭐(注目の動き)に載った件数は、月曜5件、火曜3件、水曜5件、木曜5件、金曜5件。全体が26件から125件へ五倍近くになったあいだ、こちらは動いていない。
これは偶然ではなく、そういう設計になっている。全体が21件以上の日は、⭐に載るのは最大5件と決めてある。だから件数が多い日ほど、⭐からこぼれるものが増える。月曜は26件のうちの5件で、金曜は125件のうちの5件だった。同じ5件でも、うしろに控えている数がちがう。
ただし「最大5件」であって「常に5件」ではない。火曜の3件は上限で切られたのではなく、条件を満たす動きが3件しかなかった日である。全体件数は月曜より多い29件なのに、⭐は少ない。件数と、注目すべき動きの数は、そもそも連動していない。
何を⭐に載せるかも決めてある。機関投資家による、戦略目的(重要提案・経営参加・政策)の新規参入か、1ポイント以上の大きな増減。純投資や証券会社の在庫、すでに50%を超えている支配株主の細かい動き、訂正報告は載らない。そのうえで重要提案・経営参加・政策の順に優先し、同じ目的のなかでは保有割合の高い順に、上から五つ。
つまり⭐は「その日いちばん大きな動き五つ」ではない。「決めた条件で並べたときの上位五つ」である。この違いは、ふだんはあまり効かない。効いたのが金曜だった。
同じ銘柄が、星の内と外に割れた
NSユナイテッド海運(9110)に、金曜、一日で四行が並んだ。日本郵船51.03%(▲+32.81)、日本製鉄50.84%(▲+18.04)、内海曳船26.92%(新規)、そして日本郵船がもう一行18.22%(▼-8.48)。
このうち⭐に載ったのは、内海曳船の26.92%の一行だけだった。⭐の欄には5件が並んでいて、残り4件は別の銘柄である。今週いちばん大きな増減である+32.81と+18.04は、同じ銘柄のことなのに、この欄には出ていない。どちらも結果として保有割合が50%を超えたため、支配株主の動きとして除外の側に入ったからである。
除外そのものは理屈が通っている。50%を超えた先の増減は、市場に出回る株にはあまり影響しない。ただ、条件を決めて自動で選ぶということは、その条件から外れる大きなものが必ず出るということでもある。以前、バフェットの動きが⭐に載らなかった回を書いたことがある。あのときと同じことが、規模を変えて起きていた。
足すと147%になる。株は一つ分しかないのに、である。原本を突き合わせると、郵船の18.04%と日鉄の32.80%が両方の報告に重複して現れていた。共同保有では、同じ株が複数の報告に出てくる。だから保有割合は足し算ができない。
さらに、両社とも「最近60日間の取得又は処分の状況」の欄が空だった。一株も動かしていない。増えた32.81%は日本製鉄が共同保有者に加わった分で、増えた18.04%は日本郵船が加わった分である。木曜に書いた日本化学工業の回とまったく同じかたちで、規模だけが桁違いだった。
そして新規で出ていた内海曳船の26.92%は、報告義務の発生日が2007年3月9日と書かれていた。19年前である。割合の分母も当時の発行済株式数のまま、発行者名には旧社名が併記されている。新規というバッジは「はじめて出た」の印であって、「いま起きた」の印ではない。
この四行が、125件のうちの四行として届いた。前後には証券会社の在庫の行が何十本も並んでいる。
数える単位を、間違えないこと
今週わかったことを、読み方として書いておく。
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件数は報告書の通数であって、できごとの数ではない。同じ提出者が同じ日に何本も出す。
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同じ発行者に複数の報告が並ぶとき、割合を足してはいけない。共同保有では同じ株が重複して現れる。
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件数が多い日ほど、一件あたりの見られる時間は短くなる。大きなものほど埋もれやすい。
三つとも、月曜の26件の日には気づかない。金曜の125件の日にだけ現れる。だから毎日受け取っていても、週の終わりに一度、横に並べ直す時間がいる。Martifyがやっているのは前半(毎日届ける)までで、後半(並べ直す)はまだ人の手の仕事である。
以前、八月はいちばん静かな月だと書いた。月ごとの平均と中央値で見れば、それは今も変わらない。ただ、平均が静かであることと、一日ずつが静かであることは、別のことだった。今週がそれだった。
大量保有報告書をなるべく早く受け取りたい方は、ぜひMartifyをお試しください。ベータ版のいまは無料です。