これまで大量保有報告書の中身を欄ごとに読んできた。誰が出したかで続きが変わるという話、保有目的欄の一語、取得資金が99%借入だった話、自社株消却で分母が縮んで5%を超えた話——どれも、報告書を一枚ずつ手で開いて、欄を一つずつ目で追う作業だった。
正直に言えば、その作業は重い。EDINETには毎日たくさんの大量保有報告書が積み上がり、その大半は、信託銀行や運用会社が持ち高をいつものように動かしただけの“在庫”の記録だ。本当に続きがありそうな一握りを見つけるには、まず大量のノイズをかき分けないといけない。
Martifyがやっているのは、その「かき分け」だ。報告書のどの欄を読んで、何を前に出し、何を後ろに引くか。今日は、これまで書いてきた各欄の読み方を、Martifyのなかで実際どう扱っているかをまとめておきたい。
誰が・どの銘柄を
まず出すのは、提出者(保有者)と発行者(対象会社)だ。「誰が・どの会社の株を持ったか」は報告書のいちばん基本の情報で、Martifyは保有者名と、発行体名+証券コードを並べて見せる。証券コードが空のときはコードマスタで補う。
地味だが、ここが種別を読む出発点になる。提出者の名前を見れば、それがアクティビストなのか、運用会社なのか、事業会社なのか——「誰が出したか」の見当がつく。報告書を開く前の、最初の手がかりだ。
保有目的を、ラベルに翻訳する
次が保有目的だ。報告書の保有目的欄は、ファンドや会社によって書きぶりがばらばらで、長い文章のこともある。Martifyはそのテキストを読み取って、いくつかのラベルに翻訳する。重要提案、経営参加、政策・取引、在庫・運用、純投資、その他——という具合に、文章を分類して整理する。
そのうえで、「重要提案」だけを赤く、太く立てる。残りはグレーで控えめに置く。保有目的欄の一語が「動く株主の宣言」になりうる、という前に書いた話を、色で表現しているわけだ。一覧をざっと眺めたとき、赤いラベルにだけ目が行くようにしてある。
「本気で言っているか」まで見る
ただ、「重要提案」と書いてあれば全部が本物、とは限らない。保有目的欄には、本気で経営に提案するつもりの宣言もあれば、「状況に応じて重要提案行為等を行うことがある」といった、含みを持たせただけの定型句もある。
Martifyは、そこをもう一段読む。既知のアクティビストかどうかの照合に加え、「ただし…変更する場合がある」といった但し書きや将来形の言い回しを手がかりに、確度の低い「重要提案」を切り分ける。そして確度が低いものは、自動では「注目」に出さない。本気度のはっきりしない宣言を機械が勝手に持ち上げて読者を驚かせるより、人の確認を一枚挟むほうがいい——という考え方だ。
正直に書いておくと、この選り分けは名簿とルールに基づくもので、取りこぼしがないわけではない。狙いは「漏れなく検出する」ことではなく、「確度の高いものだけを安心して前に出す」こと。攻めの精度ではなく、守りの設計だと思ってもらうのが近い。
買い増し中か、売り抜け中か
保有割合と株数も、もちろん出す。新しい様式にも古い様式にも対応して割合を計算し、前回の保有割合も拾っておく。
そのうえで前回との差をとって、増減の方向を見せる。買い増しなら ▲+◯◯ を青で、売り越しなら ▼−◯◯ を赤で。「来たとき」だけでなく「引くとき」の変更報告も同じくらい重い、と村上系の回で書いた。その方向が、色で一目で分かるようにしてある。あわせて、新規・変更・訂正のどれなのかも、バッジで区別する。
そして、「⭐注目の動き」
ここまでの処理が一つに集まる場所が、「⭐注目の動き」だ。
アクティビストや戦略目的の新規、あるいは大きな動き——続きがありそうな一握りだけを、ここに隔離して上に置く。信託銀行や運用会社の定型的な報告は、同じ「5%」でも、ここには上がってこない。保有割合の大きさで並べるのではない。動きと意思の濃さで選り分ける。だから、割合が大きいだけの静かな報告より、割合は小さくても「重要提案」を掲げて買い増している報告のほうが、上にくる。
報告書を一枚ずつ開いて、保有目的欄を読んで、増減を計算して、本気度を見極めて……という作業を、Martifyはこの一覧に畳んでいる。それが、このサービスがやっていることのほぼ全部だ。

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あえて、出していないものもある
正直に書いておきたいことがある。報告書の欄を、Martifyは全部は出していない。むしろ、あえて出していない欄がある。
担保契約の欄は、出していない。それどころか、その節からの誤った抽出を防ぐために、意図的に切り捨てている。取得資金が自己資金か借入か——あの99%借入を見抜く鍵になった欄も、いまは扱っていない。株券と潜在株式の内訳も、合算した株数として見せるだけで、分けては出していない。
足りない、と取られるかもしれない。でも、これは設計の判断でもある。中途半端に拾って誤って表示するくらいなら、確度の高いところだけを出す。情報を足すより、ノイズを入れないことを優先する。Martifyがやろうとしているのは、欄を全部見せることではなく、続きのありそうな報告を、確かな形で浮かび上がらせることだ。
正直な現在地
いまのMartifyは、まだシンプルだ。届け方はメールが中心で、華やかなアプリの画面があるわけでもない。一覧から原本(PDF)へすぐ飛べるようにして、「気になったら一次情報を自分で確かめる」を一歩で済むようにしている——そのくらいの、素朴な道具だ。
できないこと、まだやっていないことは、上に書いたとおりある。言ってしまえば、Martifyは「大量保有報告書のノイズを畳んで、動きのある銘柄を上に出す」ことに、いまは全力を振っている。
それでも、まだ届けていないものがある
最後に一つだけ。Martifyのなかには、拾ってあるのに、まだ届けていない情報がある。報告書から読み取ってはいるけれど、いまの通知には出していない——そういう素材が、実はいくつか眠っている。
それをどう扱って、どう出すか。ここから先、少しずつ増やしていく。報告書という一枚の書類のなかには、まだ読み解ける余白がたくさん残っている。その余白を、これからも一つずつ開けていきたい。
大量保有報告書をなるべく早く受け取りたい方は、ぜひMartifyをお試しください。